医師の育成プロセス:医学部の授業内容や研修医制度の仕組みを解説
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医師を取り巻く諸問題(長時間労働・地域偏在・女医の離職)

毎年、約7700人が医師国家試験に合格していますが、厚生労働省の調査では、医師不足は依然として深刻なまま推移しており、全国の医療機関で約2万4000人が不足しているとされています。臨床経験が十分に積めて、設備も整っている都市部の大病院はそれほどでもありませんが、地方の病院では医師不足から診療科の休止や病院の統廃合が進むなど問題が深刻です。同省が実施した「必要医師数実態調査」によると岩手県、青森県、山梨県は22~30%近くも必要医師数が足りないという状況になっています。

救急現場は疲労しています

医師不足が深刻な背景には、小児科や産科、救急などでは長時間労働が当たり前となっているなどの過酷な労働環境にある診療科の成り手が少ないという事情も関係しています。負担に耐えられなくなった勤務医が辞めると、残った医師が診察する患者数は増えたり、当直回数が増えるため、ますます労働環境が悪化するというスパイラルに陥ります。

また、女性医師の割合が増えているものの、出産や育児等のライフイベントで臨床現場を離れると、なかなか第一線に復帰することが難しく、定期非常勤に落ち着いてしまうケースが多いなどの問題もあります。女医が辞めないバックアップ体制を病院が整備することも医療現場が抱える大きな課題といえます。

現在、僻地等における医師や病院の不足を解決する一つの試みとして、遠隔診療のシステム作りが急がれています。これは高機能のWebカメラやテレビ電話を利用しして、離れた場所にいる医師が診療を行うものです。

患者さんの自宅には看護師などの医療者が訪問し、医療端末を接続し、患者さんの病状をモニター越しに遠隔地の医師に伝えます。またハンディカメラなどで患部を撮影し、その映像を元に医師が診断を行い、必要に応じて投薬や治療の指示を出します。

このシステムは通院が難しい患者さんの身体的、経済的な負担を軽減すると同時に受診機会を増加することで、病気の予防や早期発見につなげたり、医師の身体的、時間的な負担の軽減につながるものとして、現在試験的な運用が始まっています。